11月8日 デリ・ピザ

 ピザですよ、ピザ。ピザを注文したんですよ。六畳一間の、隣の部屋の咳払いが聞こえてくるような薄壁の部屋で、アイドルのポスターを貼ろうとしたら画鋲の先が隣の部屋に突き出しちゃうような部屋で、びしょ濡れのデブが10分もたれかかっていたらふやけて突き破っちゃいそうなこの部屋で、ピザのデリバリーを利用した。

 50%offのクーポンをゲットしたから、というのが注文を決めた唯一にして最大の理由だ。50%offのクーポンが配布されているだけではちょっと足りなくて、「ゲットする」というその能動的な態度があったからこその注文だ。手に入れようとして手に入れたものは使うしかないでしょ、と。自分から誘ったデートなら雨降っててもドタキャンしないでしょ、と。

 

 メニューを決めて、クーポンを使って、購入を確定させる。折角の機会だからLサイズ(4~5人前)を注文した。サイドメニューもドリンクも注文していないけど、支払いはおよそ1,800円となった。

 50%offで1,800円。50%offで1,800円?

 うきうきで注文を確定させたけれど、すぐに後悔も押し寄せた。1,800円払うなら他の選択肢もあったよな…と思ってしまう。だって、ピザが好きってわけじゃないし、チーズが好きってわけでもないし、ケチャップも好きではないし。デリバリーピザを注文するという(僕にとっての)非日常性に対する支出として50%offならと反応してしまったけれど、そっか…全然嫌じゃないけど、そっか…。

 

 どんな気持ちでいようが30分後にはピザが届いてしまう。覚悟を決めた僕は、とりあえず玄関に靴を3つ並べた。それから、スウェットを脱いでチノパンとボタンダウンシャツに着替えて、テレビを付けた。音量はいつもより少し大きめだ。

 玄関先でピザを受け取る。テレビの音はここまで届いている。ドアの隙間から見えるところに僕以外の人間の姿はないけれど、靴は3足あるし、チノパン履いてボタンダウンシャツ着てるし大丈夫だろう。

 ドアを締め、配達員の無事を祈る(気をつけて帰るんだよー)。ピザを手にした僕はテーブルには向かわず手前のキッチンへ。換気扇の下で食べることにした。箱の蓋を開けなくともストロングスメルここにあり、てな具合。

 

 1切れ、2切れ食べたところではっきりと理解した。絶対に食べきれない(もちろん美味しい)。3切れ、4切れ…。5切れ目を押し込んだあとには大きく「ふー」と息を吐いてしまった。口では楽しめてもお腹では楽しめない。

 目を閉じて伸びをして、深呼吸をして、ぴょんぴょん跳ねたりぐるぐる腕回したり。仕切り直してなんとか半分を超えた。プラスでもう一切れ食べ終えたところで蓋をした。

 

 美味しかったし腹も満たされたけどなんだかいまいちだ。8時間寝たのに体が重い…みたいなもやもや。ちゃんと寝たのに寝不足の日みたいに「今日しんどいかもなぁ」って思いながら過ごす一日。

 蓋を開ければまだ5切れあるピザをどうしたものか。チンして食うんだろうな。どうせうまいんだろうな。でも結局1,800円飯に使うなら他の選択肢もあったよな…なんてもやもやを抱えて咀嚼するのだろう。

 とりあえず寝るか。血糖値急上昇でぼーっとしちゃって当分なにやっても集中できないだろうし。クーポンに釣られた私が愚かだったのよ。いや、1回こっきり経験すれば十分なことを半額で済ませた私は賢者だったのよ。…だとすれば1,800円浮いたわけだからその金であれを食べに(←使っちゃうなら結局愚か?)。