1月29日 自分の傘だけ拾った方の子

 帰省を終えて新宿に戻ってきた僕はチキンにかぶりついていた。子供の頃、クリスマスのときだけ買ってもらえた骨付きチキンのお店。毎日店先で客を出迎えているおじいさんが実はお偉いさんってパターンでしたっけ?

 賑わった店内で買い物をするこの男、実は…って演出パターンは経済番組でおなじみ。全然関係ないけど。

 楽しみにしていたお笑いライブが2時間後に控えていたので、腹ごしらえだけでなく時間をつぶすことも含めて入店していた。雨が降っていたのである程度長居できるようにしっかりと注文をした。

 

 ちょうどそのときはパサツキの多い部位を食べていた。よく言えばヘルシーな部位ってことなんだろうけど、油まみれの鶏肉を食べていてヘルシーもクソもねぇだろ、と思う。どうせなら一番油まみれの部位を食べてジューシーだな〜、とニコニコしたい。

 隣の席に女子高校生の2人組が座った。チキンを食べていることが急に恥ずかしくなった。雨の日の夕方に指と口の周りを油まみれにしながらチキンを食べている姿を(パサツキの多い部位であるとはいえ)見られたくないと思った。女子高校生2人組からしたら隣の席の僕がチキンを食べていようがなかろうが関係ないことだろうけど。

 恥ずかしいなぁ…と思いながら食べ続けた。

 

 食べ終えてウエットティッシュで指を拭いていると、テーブルの角に柄の部分を引っ掛けていた僕の傘が床に落ちた。隣の席の女子高校生の傘が滑り落ちたところに巻き込まれた。もらい事故。雨と(たぶん)油でベチョベチョの床に僕の傘は落下した。

 あっ…と思いながら見ていると、女子高校生は傘を拾い上げた。自分の傘の柄をテーブルの角に引っ掛け直すと、お喋りを再開。お互いにスマホに目を落としながらの耳だけコミュニケーション。

 10秒くらい待ってから僕は自分の傘を拾い上げた。「あ、すみません」と言った女子高校生は、友達とするお喋りと同様にスマホに目を落としたままだった。自分の傘の落下が隣の客(僕)の傘を巻き込んだことに気づいているから出た「あ、すみません」だとわかり、もう一度ムカついた。

 

 「あー、私、最近お笑い芸人になりたすぎるんだよね」自分の傘だけ拾った方の子はもう一人の子に言った。

 「えー、絶対なれるよ」と相槌が打たれる。

 自分の傘だけ拾い上げた方の子は「でもそんなに甘くないっしょ」と言った。それは甘くないと思っている人の言い方ではなかった。

 

 楽しみにしていたライブはこちらの勝手な期待を裏切らない素晴らしさだった。毒蝮さんのネタとJAYWALKのネタがすごく好きだった。